より良く生きる知恵

躾けか虐待か

投稿日:2018年6月7日 更新日:

sathyatripodi / Pixabay

躾けと称して、子どもを虐待する事件が跡を絶ちません。

 

東京都目黒区のアパートで三月、

父親に殴られた後に死亡した瀬戸結愛ちゃん(5つ)は、

覚えたての平仮名で両親に許しを請う文章をノートに綴っていた。

「もうパパとママにいわれなくても
しっかりと じぶんから
きょうよりかもっともっと
あしたはできるようにするから
もうおねがい
ゆるして ゆるしてください
おねがします
ほんとうにもうおなじことしません
ゆるして」

(6月7日東京新聞1面より)

この記事を読んだとき、あなたはどのような気持ちになったでしょうか。

このいたいけな少女が、あまりにもかわいそうだという気持ち。

そして、この両親への怒りでしょうか?

 

でも、すこし立ち止まって、自分のこととして、この問題を考えてみてほしいのです。

彼女が書き残した言葉は「ゆるして」でした。

ゆるしてほしかったのです。責めないでほしかったのです。

 

わたしたちは、なんと、人を責めてばかりいるのでしょう。

その人のためといいながら、責めて、追い詰めてしまうのでしょう。

 

夫婦はお互いを

先輩は後輩を

先生は生徒を、

上司は部下を、

 

なぜ、責めつづけ、追い詰めてしまうのでしょう。

 

甘やかすと、ろくな人間にならない、からですか?

叱らないと、わからないからですか?

体で覚えさせないと、わからないと、叩くのがしつけですか?

 

それは単なる、「弱い者いじめ」「パワハラ」とどこが違うのでしょう?

 

そこに「愛」がなければ、意味がないのではないでしょうか?

 

そして「愛」とは、

 

相手を自分の思い通りにすることでも、

 

自分のために相手から搾取することでもなくて、

 

相手のために、自分を捧げることが、「愛」ではないでしょうか。

 

具体的には、相手のために、自分が損を引き受けるということ。

 

たとえ、相手が自分の思い通りにならなくても、

 

自分の自由を阻害したり、不利益をもたらすことがあっても、

 

「ゆるし」、受け入れようとする、勇気。

 

つまり、そもそも「躾け」ならよくて、「虐待」はいけないという話ではなく、

 

この「愛」の勇気のない、

 

しつけも、教育も、指導も

 

あらゆる批判も

 

この子を死に追いやった暴力と、

本質的には、なにもかわらないのではないでしょうか?

 

この「愛」という勇気のないままに、

「自分が損をしたくない」「自分が嫌な思いをしたくない」という、

そういう心の動機に支配されて、

言葉により、行いにより、

私もたくさんの暴力を振るってきた当事者ではないかと気付いて、

他人を責めることをやめて、

自分自身が変わっていきたいと願うことがないならば、

なんにも変わらないのだと思うのです。

-より良く生きる知恵

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

世の「夫」必見 映画「今度は愛妻家」

最近、アマゾンプライムで観た映画。 「今度は愛妻家」2009年の作品です。 もとは演劇の作品だったものを、映画化したそうですね。 ほとんどの場面が家の中の出来事なので、劇場向きだと思いました。 それだ …

依存する先を増やすほどもっと自由になれる

geralt / Pixabay東京大学東洋文化研究所教授の安冨渉(やすとみ・あゆみ)著「生きる技法」に、こんな言葉があります。 「往々にして人は「自立しなきゃ」と思うと、「もっと人に依存しないように …

「お金のために働かなくていい」という自由を手に入れた若者

geralt / Pixabay一昔前までは、リアルの世界とインターネットのバーシャルの世界は、別々のものだと考えられていましたね。 しかし今や、だれもが、リアルの店舗ではなくて、インターネット上で売 …

お金がたくさんあれば自由になれる、というわけでもないのです

stevepb / Pixabay もうすこしお金があったら、自由にすきなことができるのに。 そう思いますよね。 こどもは、お金さえ手に入れば、うっとうしい親から離れて、自由な生活ができるとおもうでし …

いきなり、1時間後に結婚式の司式をすることになった時の話

StockSnap / Pixabay もう、5年ほど前のことです。 電話がかかってきて、急に結婚式の司式を頼まれたことがあったのです。 それもいまから1時間後に式が始まるという結婚式。 頼まれていた …

執筆者紹介

しゅういち

牧師をしています。聖書や沢山の人との出会いを通して教えられ、気づいたことを、分かちあっています。

超わかりやすいキリスト教入門のテキストお分けします 日本人だけ知らない、世界の常識キリスト教。そのエッセンスを

まだデータがありません。

【免責事項】

最善の注意をはらって情報を記載していますが、当サイトの情報は、あくまで利用者の方自身の責任でご利用頂きますよう、ご了承ください。