やさしいキリスト教入門

これほどの「ゆるし」の出来事があったとは!!

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一九一九年、アメリカからコベルという宣教師夫妻が日本にやってきました。関東学院大学で教えながら、二〇年間大変地味な宣教活動にあけくれたかたですが、そのうちに、第二次世界対戦の足音が聞こえてくる中で、コベル宣教師夫妻は声を大にして、戦争反対を叫んだゆえに、時の政府によって、この二人は国外追放にされたのであります。このお二人は、日本を離れる船の上で、神様にこう祈ったそうであります。
「神様。私達は日本の土になるために、日本にやって来たのではありませんか。こんな形で、日本を去らなければならない。無念です。」

ところが、この二人は、アメリカに帰らないで、フィリピンのバネイという島に宣教師として行ったのであります。そして、第二次世界対戦が勃発しました。日本軍が南の島々を攻めたてて、ついにフィリピンのバネイの島にも、上陸したのであります。

日本軍を避けてコベル宣教師夫妻は、ジャングルの奥へ逃げました。ところがふもとの村で、フィリピンの女性と子ども達が日本軍に捕まえられて、首をはねられるという噂を耳にしたのです。そのときこの二人はためらわずに自ら、日本軍の中に身を投じて、二〇年間使いなれた日本語をもって、女性と子どもを処刑すべきではないと、必死の交渉をしました。
ところがコベル先生のかばんの中に絶対にあってはならないものが入っていたのです。それは携帯用のラジオでした。それでスパイであるという決定的な嫌疑がかけられたのです。どんなに説明しても受け入れてもらえませんでした。そしてついに11人のフィリピンの女性と子ども達と一緒に、この宣教師夫妻も首をはねられて処刑される事になったのです。
一三人の人たちがそこに並べられ、そして日本刀が抜かれて、今まさに彼らの首がはねられようとする直前に、この宣教師夫妻は一つの願い出をしました。
「どうか処刑を一時間だけ延ばして下さい。私達は全員がクリスチャンですから、最後の祈りを捧げさせて下さい。」その願い出は聞き入れられ、彼らはそこで小さな輪を作ってひざまづき、祈りました。今、自分達を殺そうとする日本のために、彼らは涙を流して、最後の祈りを捧げたのです。
奇跡は何も起こりませんでした。この13人は、日本軍によって、全員切り殺されてしまいました。

しかし、このお話はここで終わらないのであります。

実は、やがて日本軍の中からこの出来事を通して何人も何人も、クリスチャンになる人たちが起こってきたのです。その中の代表的な人が「トラ、トラ、トラ、」真珠湾攻撃隊長を務めた、あの有名な淵田みつお大佐でした。

その出来事から数年後、戦争が終わって、敗戦の虚脱感と絶望の中で悶々とした日を過ごしている淵田大佐のもとに、かつての部下が捕虜収容所から釈放され、あいさつに訪ねて来ました。この部下たちから、淵田大佐は驚くべき話を聞きました。淵田大佐は彼らに、
「おまえたちは、、敵の捕虜になって、収容所で地獄の思いをしてきただろう」
と聞いたのですが、この部下達は口をそろえて、
「大佐、そうではありません。収容所の数年問は私達にとって、天国でした。」といったのであります。
実はその捕虜収容所に、一人の白人の女性が働いていました。この女性は彼らに対して、食料品を差し入れ、薬を差し入れ、彼らを励ましたのであります。あんまりよくしてくれるので、ある時彼らはこの女性にたずねました。
『あなたは敵の捕虜である私達に、なぜそんなによくしてくれるのですか。』
そうしたらその女性が答えました。『私の両親は宣教師として二〇年、日本で働きました。そして戦争に反対したために国外追放にあい、その後フィリピンに渡りました。そこで日本兵に首をはねられて、殺されました。両親が最期まで愛した日本のため、私も働かせていただいています。」
そう答えたそうであります。

日本には、何代かけても主君の仇を打つ、親のかたきを打つという、あだ討ちを美徳としている忠臣蔵が好まれる、そういう国民性を持っていましたから、戦争中もそういうあだ討ちのような戦争教育を受けてきた日本の兵隊達には、この女性のしている事は全く信じられないことであったでありましょう。

彼らは彼女に言いました。『あなたは、なぜそういう生き方ができるのか。』
そうしたら、その女性が日本語訳の一冊の聖書を持って来てくれました。その聖書を読んで、彼らは、キリストを信じてクリスチャンになったというのであります。そして、彼らにとって、収容所の数年問は、天国だったと、大佐に報告したのであります。
腕を組んで、目をつぶってその話をじっと聞いていた鬼のような淵田大佐の目から、熱いものが溢れました。やがて彼は渋谷の駅頭で、自ら聖書を手に入れると、むさぼるようにこれを読みました。そして彼は自らイエス・キリストの十字架の出来事をそこに見いだし、「父よ。彼らを赦したまえ。彼らは自分が何をしているのかが、わからずにいるのです。」という、そのイエス・キリストの祈りのことばを見つけだし、彼はクリスチャンになる腹を決めるのです。

彼はその後、牧師になるため神学校に入学しました。そして聖書を持って、真珠湾を訪ねました。「トラ、トラ、トラ、」あの真珠湾攻撃隊長、淵田大佐が聖書を持って真珠湾に帰って来た。これは世界を駆けめぐるニュースになりました。

やがて淵田大佐は召されましたが、その最後の一息まで彼が叫んだメッセージは、これでした。
「憎しみの革命を通して平和は来ない。戦争を通して平和は来ない。真の平和はイエス・キリストの十字架の愛。アガペの愛によってのみ来る」

アガペの愛とは、神の愛のことです。神の愛、神の赦しを信じるところに、本当の平和がやってくるのです。

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