人は、自分の意思の力だけで、生きているように思い込みやすいですが、
実際には、自分の意思によっては、自分の体のほとんどをコントロールできないわけです。
自分の意思とは無関係に、心臓は動き、あらゆる臓器はその役目を果たします。
いちいち自分の意思で命令しなくても、自律神経によって心臓の鼓動や内臓や免疫などは、
絶妙なバランスで、コントロールされているわけです。
もし、この自分が意識せずに行っている様々な処理を、いちいち意識して行なわなければならないのだとしたら、
一日だって生きられません。第一眠ることさえできません。意識をなくした瞬間に、心臓はとまってしまいます。
人間の体には、いちいち意識しなくてもちゃんと生きられるように、自律神経をはじめとしたさまざまな自動調整機能が、あらかじめ備えられているわけです。
この自動調整機能がバランスよく機能するための「無理」のない生活こそ、心身の健康には大切でしょう。
広辞苑を引くと「無理」とは、「道理のないこと」とあります。
そして「道理」とは、「あるべきみちすじ」のこととあります。
「無理」をすると、体や心を壊すのは、
人の体のなかに備わっている、精巧ないのちのシステムの「道理」「あるべきみちすじ」を無視するからであり、
そうまでして、「自分の意思」や「他人の意思」を貫き通す、「無理」な生活によって引き起こされた、
体の精巧なバランスの異常状態のように、思うわけです。
もちろんこれは医療の話ではなく、考え方の話です。
ただ、医療も「この精巧な体のシステム」をサポートするのがつとめなのであって、
自分の体を治すのも、自分の体の精巧なシステム自身であるわけです。
ですから「自分や他人の声」にかき消されがちな、この「体」という素晴らしいシステムからの「声」に、
耳を澄ますあり方、生き方、生活習慣が、
心身の健康のために大切であることに、気づいておきたいのです。