生きる喜びがないとき

投稿日：2018年1月6日更新日：2024年10月26日

苦難の時代における希望と信仰
―コヘレトの言葉が現代に伝えるメッセージ―

旧約聖書のコヘレトの言葉には、深い洞察が込められています。

「すでに死んだ人を、幸いだと言おう。さらに生きていかなければならない人よりは幸いだ。いや、その両者よりも幸福なのは、生まれてこなかった者だ。太陽の下に起こる悪い業を見ていないのだから」

この言葉に出会うとき、多くの人は戸惑いを覚えるかもしれません。しかし2024年を生きる私たちにとって、この言葉は特別な意味を持っています。

私たちは今、かつてない変化の時代を生きています。スマートフォンの画面を通じて世界中の出来事が瞬時に伝わり、SNSで常に誰かとつながっているように見えます。しかし、その裏で多くの人々が深い孤独を抱えています。表面的なつながりは増えても、心の深いところで響き合う関係は却って希薄になっているのです。

雇用は不安定になり、年金への不安は増大し、環境問題は深刻さを増しています。AIの発展は私たちの仕事や生活を大きく変えようとしています。若い世代は将来への展望を描きにくく、競争社会のプレッシャーに苦しんでいます。

このような時代だからこそ、コヘレトの言葉は私たちの心に響きます。それは単なる悲観ではなく、現実を直視する勇気を持った者の誠実な告白なのです。

しかし、ここで立ち止まってはいけません。私たちの世界は、目に見える現実だけで構成されているわけではありません。スマートフォンの画面を一時的に離れ、静かに目を閉じてみましょう。そこには、デジタルの喧騒を超えた深い静けさがあります。

教会やコミュニティに足を運んでみると、そこには世代を超えた温かい交わりがあります。見知らぬ人のために時間を使うボランティア活動には、お金では買えない充実感があります。これらの経験は、私たちが思っている以上に、世界が豊かで意味に満ちていることを教えてくれます。

信仰は、このような新しい視点を与えてくれます。それは単なる伝統的な儀式ではなく、私たちの存在の根源的な意味を照らし出す光なのです。毎日の祈りや黙想の時間は、混沌とした世界で内なる平安を見出す助けとなります。

聖書を読み、その言葉に耳を傾けるとき、私たちは自分だけの狭い世界から解放されます。そこには、何世紀もの時を超えて、人々の苦悩と希望が織りなす壮大な物語があります。その物語の中で、私たちも生かされ、意味ある存在として生きているのです。

現代を生きる私たちにとって、コヘレトの言葉は絶望のメッセージではありません。それはむしろ、表層的な慰めを拒否し、より深い希望へと私たちを導く道しるべなのです。苦難や不安は確かに存在します。しかし、それは物語の終わりではありません。

神の愛は、デジタルの喧騒を超え、社会の分断を超え、時代の不安を超えて、今もなお私たちに届いています。その愛に触れるとき、私たちは新しい希望と生きる勇気を見出すことができるのです。これこそが、コヘレトの言葉が現代に伝える真のメッセージではないでしょうか。