この映画は、死刑囚と定期的に面談をする「教誨師」のボランティアをするキリスト教の牧師、佐伯を大杉漣が演じ、対する死刑囚の6人(古舘寛治、光石研、五頭岳夫、小川登、烏丸せつこ、玉置玲央)の一人一人との面会室での対話シーンだけで、おそらく90%以上が構成されるという、非常に特異な映画です。
にもかかわらず、最後まで緊張感が続き、ぐいぐいと引き込まれていく、牧師と死刑囚たちの深い対話、演技力に圧倒されました。
牧師は当初、彼らとの面談において、彼らが自分の罪に向き合い、悔い改めて平安を得るようにという意図で、聖書の話を伝えようとするのです。
しかしそのような上からの言葉は、彼らの心に全く届かず、むしろ、彼らによって、同じ土俵へと引きずり降ろされていくような対話の中で、牧師の内面が露わにされていき、過去の記憶が引き出されていく、意外な展開となっています。
そして、その面会室で洗礼を受ける人。また冷徹に振る舞い続けた男が、突然おそいくる死刑執行の現実に、恐怖におののく姿。
その現場に教誨師として初めて立ち会う牧師の葛藤。
その一つ一つの出来事に、深く考えさせられ、感情を揺さぶられるシーンの末に、
ラストシーンで、囚人から渡された一枚の紙に書かれていた一言の重み。
それは、実に、死刑囚も牧師も映画を観ている人もなく、
すべての死にゆく人への問いかけと、
そして救いの「福音」として、深く心に響く一言。
ぜひ、映画館で観てくださいね。